維新新人議員の提起で話題になった「#満額100万円支給」「文書通信交通滞在費」って何?
こんばんは。Shiroです。
今回は、政治時事ネタということで、SNS上での維新新人議員の発信から火が付いた「文書通信交通滞在費」の「満額100万円支給」問題について取り上げます。
<目次>
1. 「文書通信交通滞在費」の満額100万円支給についてSNSなどで話題に
2021年10月31日に衆議院選挙が行われ、それを受けて11月10日から3日間、特別国会が召集されましたが、その中で、日本維新の会の新人議員の小野たいすけさんが、「文書通信交通滞在費」についてTwitterで以下の発信をし、話題になりました。
ざっくり言うと、今回の初当選組に支給された文書通信交通滞在費が、10月31日に当選したということにもかかわらず日割りされてらず、満額の100万支給だったのはおかしいのでは?という内容でした(詳細や正確なニュアンスは小野さんのnoteを見てもらえればと思います。)。
これを受けて、維新の吉村副代表(大阪府知事)や他の維新の議員もSNSで声を上げたりした結果、Twitterでバズることになりました。
なお、厳密には、維新の吉村副代表や梅村議員が過去に問題視して発信はされていたようですが、実際に世論の注目が集まり、大きく盛り上がったのは今回が初めてではないでしょうか。
その後さらに、維新OBの橋下徹さんのSNS発信やTVでの維新の露出(池下議員、音喜多議員など)も増え始め、世間の関心を集めるようになってきた、というわけです。
2.そもそも文書通信交通滞在費って何?
解説すると、文書通信交通滞在費は、国会議員に対して、公の書類を発送したり、公の性質を持つ通信等のために支給される手当です。
一応、この文書通信交通滞在費の根拠となっているのは法律です。
まず、国会法第38条は「議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、別に定めるところにより手当を受ける。」と規定しています。
この国会法の規定を受けて、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」は以下のように文書通信交通滞在費について規定しています。
第九条 各議院の議長、副議長及び議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、文書通信交通滞在費として月額百万円を受ける。
2 前項の文書通信交通滞在費については、その支給を受ける金額を標準として、租税その他の公課を課することができない。
つまり、まとめるとこういうことです。
- 文書通信交通滞在費として議員に支給されるのは月100万円
- 文書通信交通滞在費は非課税
- 文書通信交通滞在費は、日割り計算されない(ちなみに、上記「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」上、議員歳費(報酬)は日割り計算されることになっています。)。厳密に言うと、法律の中に、日割り計算に関する規定がありません。
3. 文書通信交通滞在費について、今後どうなるの?
⑴ 維新は2021年10月分の100万円の文書通信交通滞在費を全て寄付に回すほか、関連法案を提出する模様
日本維新の会は、11月15日の報道によると、10月分(31日だけのために支給された100万円×新当選議員数)の文書通信交通滞在費については、寄付することとして、寄付先の検討を開始したとのことです。
また、上述のように、文書通信交通滞在費については、法律で規定されていますが、そもそも日割り規定がなかったり、余った時の返納規定がないので、これらを正したい場合、法改正が必要となります。
それもあり、日本維新の会は、日割りや返納に関する法改正案の臨時国会での提出を検討しているようです。おそらくは、12月からの臨時国会は1か月もないので通すのは難しいと思いますが、そこで問題提起しつつ、来年の通常国会での法案成立を目指していくものと思われます。
ちなみに、過去にも同趣旨の法案を提出していたようですが、審議されない「つるし」にあっていたようですね。
⑵ 国民民主党も文書通信交通滞在費について問題視し、他党との協議を開始
国民民主党の玉木雄一郎代表は、文書通信交通滞在費について、制度改正含め、日割り給付を可能とできるよう、与野党各党との協議を開始していくそうです。
上記の維新の法改正案の提出の共同提出、ということに恐らくなっていくのではないかと思われます。
⑶文書通信交通滞在費について、その他の動き
今のところ(2021年11月15日時点)、上記のほかに大きな動きは無いようですが、今後、自民党など他の政党の考えも発信されてくるかと思いますので、要チェックですね。
3.文書通信交通滞在費についての私見
以上、文書通信交通滞在費の満額100万円支給問題について見てきました。
内容、なんとなくご理解いただけたでしょうか?
個人的には、文書通信交通滞在費については、日割りや返納規定を追加する法改正については、どんどん超党派で進めてくれれば良いと思っています。
ただ、他方で、そもそも、政治活動にはお金がかかるのも確かで、そういった費用を議員事務所がどの程度賄えているのか、あるいは賄えておらず実際は議員報酬から補てんしているのか、など含めた実態調査が必要なのでは?と考えています。
まずはこのようなファクトを押さえないと、今回の文書通信交通滞在費もそうですが、政治活動経費としてどのような水準が適切なのか、を議論できないためです。
もっと言うと、こういうファクトを押さえないまま政治家の「身を切る改革」を進めた結果、下手をすると、政策提案力の低下といった副作用を招きかねないのでは?と危惧しています。
(例えば、政策スタッフの数は、日本はアメリカの数分の一ですが経費に対する手当を無暗に削るとさらに政策立案力が低下することになりかねません。
なお、欧米の政策スタッフの比較は、国立国会図書館の調査及び立法考査局が「欧米主要国の議員秘書制度」の中でまとめていますので、御関心のある方はどうぞ。
今回の記事はここまでです。また次回。