ベーシックインカム(BI)って何?(前編)ー生活保護じゃダメなの?給付付き税額控除・負の所得税って何?
こんばんは。Shiroです。
今回の記事では、最近NHKに取り上げられるなどだいぶ浸透してきた感のある「ベーシックインカム」(BI)ついて取り上げます。
<目次>
- 「ベーシックインカム」って何?
- ベーシックインカムは生活保護で良いのでは?
- ベーシックインカムは「給付付き税額控除」とはどう違うの?
- ベーシックインカム・給付付き税額控除の財源はどうするの?(後編)
- ベーシックインカム・給付付き税額控除に関する主要政党のスタンス(後編)
- 日本維新の会のベーシックインカム・給付付き税額控除に関する姿勢
- 国民民主党のベーシックインカム・給付付き税額控除に関する姿勢
- れいわ新選組のベーシックインカム・給付付き税額控除に関する姿勢
- ベーシックインカム・給付付き税額控除に関するまとめ(後編)
1. 「ベーシックインカム」って何?
皆さん、ベーシックインカムという言葉をご存知でしょうか?
政治に興味のある方であれば、どこかで聞いたことがあるかと思いますが、「ベーシックインカム」とは、大まかに言うと、以下の特徴を持った国からの直接給付の仕組みです。
- ベーシックインカムの特徴①:「無条件な給付」であること
- 誰に対しても(無条件に)支払うのが、ベーシックインカムの特徴の一つです。なので、所得によって払う、払わないといった判断は発生しませんし、ライフサイクル上で対象を限定することもありません(●●歳以上に支払う、子育て世帯のみ、など)。
ただし、外国人についてまでベーシックインカムを支払うかどうかは議論があり、永住権を持っている外国人に限定して支払うべき、といった説など様々です。
- 誰に対しても(無条件に)支払うのが、ベーシックインカムの特徴の一つです。なので、所得によって払う、払わないといった判断は発生しませんし、ライフサイクル上で対象を限定することもありません(●●歳以上に支払う、子育て世帯のみ、など)。
- ベーシックインカムの特徴②:「継続的な給付」であること
- もう一つの特徴は、継続的な給付であることです。ですので、一回限りの、新型コロナウィルス対策で政府が行ったような、全国民に対する一律10万円給付などの給付はベーシックインカムには該当しません。
例えば毎月7万円の給付など、継続的に給付が行われるものをベーシックインカムと呼びます。
- もう一つの特徴は、継続的な給付であることです。ですので、一回限りの、新型コロナウィルス対策で政府が行ったような、全国民に対する一律10万円給付などの給付はベーシックインカムには該当しません。
なので、一言で言うと、ベーシックインカムとは、「原則として無条件に、誰であっても受け取ることができる継続的な給付」と言えます。
2. ベーシックインカムは生活保護で良いのでは?
このベーシックインカムの性質は、その思想が生まれた歴史的背景から、最低限の生活を保障する、貧困者の救済のための給付として捉えられています。
最低限の生活保障なら生活保護があるのでは?と思われる方もいると思いますが、生活保護は、受給資格がある人のうち、2割程度しか実際には受給できていないという実態があり、実際には憲法第25条が保障するはずの生存権が必ずしも十分に保証されていないという現状があります。
また、生活保護については、勤労所得が一定額を超えるまでは、いくら働いても、生活保護と勤労所得を合算した手取り額が増えないために、勤労意欲を削ぐという問題点も指摘されています。
以上の生活保護の2つの問題点は、ベーシックインカムの導入によって解決します。
一点目については、無条件・継続的な給付であるため、生活保護で最低限の生活保障を受けられていない8割の層に対しても、救済をすることができます。
二点目の勤労意欲の問題については、ベーシックインカムは生活保護と異なり、勤労による所得が増えれば、ベーシックインカムと合算したトータルの所得が増える仕組みであるため、生活保護に比べ勤労意欲を抑制する効果は限定的(むしろ勤労意欲を促進する可能性)と言えます。
3. ベーシックインカムは「給付付き税額控除」とどう違うの?
次に、ベーシックインカムの話をするときによく一緒に出てくる「給付付き税額控除」(「負の所得税」とも言われます。)について、ベーシックインカムとの違いを説明します。
ざっくり言うと、「給付付き税額控除」(ないし「負の所得税」)は、累進課税である所得税とベーシックインカムの支給額とを予め合算したうえで、個人に対してベーシックインカムの給付(又は、所得税額がベーシックインカムの支給額を上回れば課税のみ行う)を行うものです。
経済学者のミルトン・フリードマンが1960年代に主張した「負の所得税」がその原点です。
「給付付き税額控除」は、低所得者層など、所得によっては給付を受け取るだけの人も出てくることから、「負の所得税」とも言われます。
説明だけだと分かりづらいと思うので、具体例を出して説明すると、以下のようになります。
ベーシックインカムでの給付を一律月額7万円とした場合、年間で84万円の給付を得られます。
これに、所得税額が50万円のAさん、80万円のBさん、100万円のCさんがいた場合を考えてみましょう。
ベーシックインカム支給分の84万円を、各自の所得税の金額と合算すると、Aさんは34万円の支給、Bさんは4万円の支給、Cさんは課税でマイナス16万円ということになります。
つまり、所得が低い人ほど、恩恵を受けられるのが給付付き税額控除と言えます(逆に、制度設計次第ではありますが、所得が高い人の場合、ベーシックインカムの給付部分と所得税が相殺されても所得税額の方が高いので、純負担が発生することになります。)。
ただ、これはベーシックインカムについても同じことで、給付付き税額控除や負の所得税はベーシックインカムの給付時に所得税額と合算処理を行っていますが、通常のベーシックインカムの場合は、後に所得税が課されるという、タイミングの違いに過ぎないためです。
一点、注意が必要なのは、このように、所得に応じてベーシックインカム給付額と所得税額との間で純受益(プラス。キャッシュイン)と純負担(マイナス。キャッシュアウト)を生じるようにするかどうかは、制度設計による、という点です。
理論的には、ベーシックインカムの給付は非課税にして、所得に関わらず給付を行うということも可能です。
ただ、その場合、当然ながら必要な財源が膨れ上がることと、富の再配分という観点から、何らかの制限をかけるべきではないか、という主張が一般的なようです。
以上、ここまで、ベーシックインカムとは何か?生活保護ではダメなのか?給付付き税額控除(負の所得税)といったテーマについて説明してきました。
次に、ベーシックインカムについては理解したけど、財源はどうするの?という疑問があるかと思いますので、次回の後編では、ベーシックインカムや給付付き税額控除(負の所得税)の財源について見てみたいと思います。
また、併せて後編では、日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組といった主要各党が主張しているベーシックインカムや給付付き税額控除についても見ていきたいと思います。
⇒後編はこちらから
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