こんばんは。Shiroです。
今回の記事はベーシックインカムの記事前編の続きです。
<目次>
- 「ベーシックインカム」って何?(前編)
- ベーシックインカムは生活保護で良いのでは?(前編)
- ベーシックインカムは「給付付き税額控除」とはどう違うの?(前編)
- ベーシックインカム・給付付き税額控除の財源はどうするの?(後編)
- ①新規国債の発行のみで賄う
- ②ストック課税強化で賄う
- ③行政コストの無駄削減・既存の年金・社会保障制度の統廃合で賄う
- ④当面は新規国債で、経済成長後の税収増で賄う
- ベーシックインカム・給付付き税額控除に関する主要政党のスタンス(後編)
- 日本維新の会のベーシックインカム・給付付き税額控除に関する姿勢
- 国民民主党のベーシックインカム・給付付き税額控除に関する姿勢
- れいわ新選組のベーシックインカム・給付付き税額控除に関する姿勢
4. ベーシックインカム・給付付き税額控除の財源はどうするの?
ベーシックインカムの財源については、様々な意見がありますが、主要なものを整理すると以下のとおりかと思います。
①新規国債の発行のみで賄う
②ストック課税強化で賄う
③行政コストの無駄削減・既存の年金・社会保障制度の統廃合で賄う
④当面は新規国債で、経済成長後の税収増で賄う
①新規国債の発行のみで賄う
これはちょっと極端な考え方と言えるのかもしれませんが、最近はやっているMMTなどの立場をとる経済学者・専門家は、
日本の場合はギリシャなどと異なり、自国建ての通貨を発行する中央銀行を持っており、政府と中央銀行を一体で(統合政府として)みるべきで、そうすると資産と負債がバランスしているので、そもそも財政破綻のリスクは小さい。
また、
預金というのは銀行にとっては負債だが、銀行は負債を負い続ける「永続する主体」である。国(統合政府)もこれと同様で、新規国債の償還期限が来れば借換債を発行して、負債を持ち続ければ良い。
ということを前提として、新規国債の発行と貨幣発行を通じて、ベーシックインカムの財源は賄える、ということを訴えています。
また、財政出動によるベーシックインカムの給付・需要喚起が行きすぎて仮にインフレが起きた場合は、インフレ率2~3%を目安として、政策金利の引き上げや日銀の国債の市中売却(いわゆる売りオペ)を通じてインフレ率を引き下げれば良い、というスタンスをとっています。
個人的には、国の負債がどこまで許容されるのか、が未知数な部分もあることから、少なくとも現時点では、すべての財源を新規国債・貨幣発行で賄うという立場には賛成できないと思っています。
②ストック課税強化で賄う
この立場はそこまでメジャーではありませんが、例えば、金融資産課税の導入など、ストック課税を通じた税収増で、ベーシックインカムの財源を賄うべき、という考え方です。
個人的には、ストック課税の強化も、ベーシックインカムの一つの財源としては、あり得ると思いますが、金融資産課税の導入を行う場合のインパクト・リスク(富裕層の資産、あるいは富裕層自体の海外流出)といった諸々の要素が絡んでくると思いますので、慎重な議論が必要ではないでしょうか。
③行政コストの無駄削減・既存の年金・社会保障制度の統廃合で賄う
これは、補助金見直しや行政コスト削減で浮いた財源や、年金や既存の社会保障制度の一部の給付財源をベーシックインカムの財源にするという考え方です。
こちらも、ロジックとしては理解できるものの、既存の補助金見直し、行政コスト削減はかつての民主党が政権を取ったときに同じことを言っていて失敗したこと、また、年金や社会保障制度は極めて複雑、かつ、これを払っている人払っていない人といった有権者間での不均衡が存在していることから、これをそのままベーシックインカムに切り替えるということは、少なくとも相当の時間をかけて議論・設計をしないと難しいのでは、と考えています。
おそらく、少なくとも10年~20年は必要では、と直感的には思っています。
④当面は新規国債で、経済成長後の税収増で賄う
こちらは、当面は新規国債の発行でベーシックインカムの財源を賄うが、ベーシックインカムにより需要・消費が喚起され、経済成長してくれば、自ずと税収は増えるので回収できる、という考え方です。
経済成長後の税収増という観点はあるものの、①の考え方に近いですね。
個人的には、ベーシックインカムの導入を急ぐのであれば、これが最短のアプローチだと思っていますし、経済成長のための需要喚起や所得向上という観点では、このアプローチと減税が中心になると考えています。
以上がベーシックインカムの主要な財源の考え方です(少なくとも自分が知っている範囲では)。
一点、財源絶対額としていくらいるの?という疑問があるかもしれませんが、これは給付額をいくらにするのか(月5万円なのか、7万円なのか等)によって変わりますが、仮に7万円だと100兆円程度必要、ということになります。
ただ、ベーシックインカム部分も課税対象ということであれば相当部分は回収できますし、給付付き税額控除であれば、最初からより少ない財源で済むことになります(給付と課税が同時のため)。
5. ベーシックインカム・給付付き税額控除に関する主要政党のスタンス
・日本維新の会のベーシックインカム・給付付き税額控除に関する姿勢
維新八策や日本大改革プランによると、日本維新の会のスタンスとしては、ざっくり言うと上記「③行政コストの無駄削減・既存の年金・社会保障制度の統廃合で賄う」が原則で、これで足りない部分については、「④新規国債⇒経済成長後の税収増で賄う」というアプローチを採用しています。
ちなみに、素案では日本大改革プランに入っていた金融資産課税の導入については、いったんプランへの盛り込みは見送られ、ただし今必要になれば第二の矢として用いる考えがあることを、記者会見中で藤田文武衆議院議員が説明しています。
なお、日本維新の会は、プライマリーバランスについて、
「現実的な黒字化の目標期限を再設定したうえで、経済成長/歳出削減/歳入改革のバランスの取れた工程表を作成し、増税のみに頼らない成長重視の財政再建を行います。」
日本維新の会 政策提言
維新八策 2021 より
として、引き続き堅持することをマニフェスト上で明言しています。
また、給付額は月に6~10万円というレンジで考えているようです。
給付対象は0歳以上の全国身ですが、外国人の取扱いについては、永住している人については認めるかどうかも含め、今後検討を行うとしています。
・国民民主党のベーシックインカム・給付付き税額控除に関する姿勢
国民民主党は、「政策5本柱」の中の2つ目として「給料が上がる経済」の実現を掲げています。
その中で、「日本版ベーシック・インカム(仮称)」の創設を掲げ、
- 給付付き税額控除の導入による、尊厳のある生活を支える基礎的所得の保障
- マイナンバーと銀行口座を結び付けて給付などの申請が不要な「プッシュ型支援」を実現
- この二つによって「日本版ベーシック・インカム(仮称)」を創設
を目指すとしています。
この「日本版ベーシック・インカム」自体の財源をどうするかについては、今回の衆議院選挙のマニフェストの中では明確に触れらていません。
しかし、今回の衆議院選挙のマニフェストの、「積極財政への転換」の中で「財源の多様化」として「日銀保有国債の一部永久国債化」と「富裕層への課税強化」を謳っていますので、日本版ベーシック・インカムについても、これらの財源によって賄うことを想定しているのではないかと考えられます。
(上の分類で言うと、②と④の合わせ技ですかね。)
ちなみに、玉木代表は、ベーシックインカムについては、いきなりユニバーサルに行うのではなく、社会実験的に、パイロットプログラムとして求職者ベーシックインカムといった形で導入していくべきという立場をこの動画の中でも示しています。
こちらは玉木代表の財政観(積極財政・高圧経済)を語った動画↓
・れいわ新選組のベーシックインカム・給付付き税額控除に関する姿勢
最後に、れいわ新選組のベーシックインカムに関する主張を見てみます。
「ベーシックインカム」という言葉はマニフェスト上は使っていませんが、以下の動画などでは、「ベーシックインカム的なもの」として「れいわニューディール」の政策を維新のベーシックインカムと比較して紹介しています。
それによると、すべての人に、コロナ禍の間は月20万円、その後は月3万5千円以上(加算あり)を給付する、ということです。
れいわ新選組は、その財源については、基本的には新規国債の発行で賄う、というスタンスを明確にしています。また、富裕層への増税も掲げていますので、上の分類で言うと、①と②(あるいは②と④)の合わせ技に近いかと思います。
また、以下の動画では時限的に、月に10万円給付の場合のインフレ率のシミュレーション(参議院事務局に依頼したものとのこと)を行ってますので、興味ある方はどうぞ。
以上、結構なボリュームになりましたが、ベーシックインカム(又は給付付き税額控除)の財源と各党の主張について整理してみました。
残余論点として、そもそも、ベーシックインカム・給付付き税額控除によってどれだけ需要喚起できるのか?所得向上につながるのか?経済成長への影響は?(乗数効果はどれくらいなのか?)といったものがあるかと思いますが、こういった点はまた追ってブログで取り上げられればと思います。
今回の記事は以上です。
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それではまた次回👦