どうなる憲法改正?ー憲法審査会は自民、維新、国民で議論主導?来年の参議院選挙と同時に国民審査か?
こんばんは。Shiroです。
先週、衆議院の憲法審査会が開催されましたが、最近、維新や国民民主が憲法改正議論を進めていく旨表明しており、今後動きが加速する可能性が高いです。
ということで、今回は、憲法改正に関する記事になります。
<目次>
- そもそも憲法改正って何?
- 憲法の何条が改正の対象候補なの?主要政党の考えは?
- 自由民主党
- 公明党
- 日本維新の会
- 国民民主党
- その他(立憲民主党、共産党、れいわ新選組)
- 憲法改正に関す直近の動きと今後の見通し
1. そもそも憲法改正って何?
まず憲法って何?っていうところのおさらいですが、学生時代に社会の事業で習っているかと思いますが、日本国憲法は最高法規であり、これに反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しないと憲法上規定されています(第98条)。
ざっくり言うと、「一番偉い」法規範ですかね。
戦前には「大日本帝国憲法」がありましたが、戦後米国の占領統治下で、GHQが主導する形で現在の日本国憲法が作成され、1946年に発布されました。
憲法の各規程の内容はある程度ご存知かと思いますので割愛しますが、今論点となっているのは、日本国憲法自体が、作られてから75年が経過しており、時代の変化に対応できていない(解釈変更・拡張によって対応している部分もあるが、本来望ましくない。)ために、いくつかの憲法規定を修正・追加しましょう、という点です。
ちなみに、憲法を改正する場合には、憲法審査会による改正原案提出、または議員による発議(衆議院で100名以上、参議院で50名以上)がまず必要であり、その後、改正案について、先議の議院の憲法審査会での審議を経て本会議の可決が必要です。
この先議院で可決されれば、後議の議院で同じプロセスを経たうえで、憲法改正原案は発議されます。その後は、改正案について国民審査を行い、有効票数の過半数が賛成であれば、憲法は改正されることとなります。
2. 憲法の何条が改正の対象候補なの?主要政党の考えは?
憲法改正の対象候補となっている条項は多岐にわたります。主要政党ごとに、考えを見ていきましょう。
自由民主党の改憲案
自民党の改憲案ですが、特設サイト「憲法改正ってなぁに」や憲法改正推進本部の各種資料を見ると、以下の改正内容となっています。
- 憲法第9条について、「自衛隊」(or国防軍)の明記と「自衛の措置」(自衛権)についても言及する
- 国会や内閣の緊急事態への対応を強化すべく、緊急事態においても、国会の機能をできるだけ維持し、それが難しい場合は、内閣の権限を一時的に強化し迅速に対応できる仕組みを憲法に規定する。
- 参議院の合区解消、各都道府県から必ず1人以上選出へ
- 教育環境の充実
ちょっと私の情報収集の力のせいかもしれませんが、原案が作られたのが2012年とやや古く、直近の外部環境の変化に対応した具体的な改正案とはなってない、という印象です。
ただ、報道を見る限り、今後、憲法審査会の議論に向けて、自民党の憲法改正推進本部(実現本部に改称)でも今後議論が行われ、また全国キャラバンも行っていくようですので、そういった中で出てくる議論を注視していきたいと思います。
公明党の改憲案
公明党は、2021年衆議院選挙の公約集の中で、憲法改正について言及しています。
それを見てみると、以下の改正内容となっています。
- 憲法第9条は堅持。自衛隊の存在も十分浸透しているため敢えて明記する必要はない。
- 緊急事態における国会機能の維持
- 大災害など国家危機の事態において、国会機能を維持するために、オンラインによる国会審議、採決に参加できる制度の創設を検討
- 場合によっては、緊急事態に際して議員の任期を延長することも検討
- デジタル社会における個人情報の保護や自己の情報に関する自己決定権の憲法上の位置づけを検討
- デジタルディバイド(情報格差)について、国や事業者などの責務を検討
- 選挙や国民投票において、国民の自由な意思形成を保障されるよう、また、多様な情報に有権者がアクセスできるように国・事業者の責務を検討
- 地球環境保護の責務を追加することを検討
やはりというか、憲法9条については改正を否定していることと、憲法改正についても記述がざっくりしており、基本的に憲法改正についてそれほど前向きでないことが伺えます。
日本維新の会の改憲案
日本維新の会は、2021年の衆議院選挙に向けた「維新八策」の中で、「8 憲法改正に正面から挑み、時代に適した「今の憲法」へ」という項目を設け、改憲案を示しています。それによると、
- 教育無償化について、すべての国民は経済的理由によって教育を受ける機会を奪われないことを憲法に明文化し、幼児教育から高等教育についても、法律の定めるところにより無償とする。
- 道州制の規定を追加し、
- 地方自治について、自治体は広域自治体の道州と基礎自治体の二層制として、自治や問題解決はできるだけ小さな単位で行い、対応しきれない部分のみ大きな機関で補う「補完性の原則」を明文化。国は国家として存立に関わる事務・本来果たすべき役割を担い、それ以外の事務は原則として自治体が担うよう改革する。
- 自治体の組織及び運営につき、その自治体の条例で決められるよう改め、道州は国の役割以外の法定事項につき、法律に優位した条例を制定できるようにし、「法律の範囲内」とされている現行憲法から自治体の条例制定権の範囲を飛躍的に拡大させる。
- 自治体の課税自主権を定める一方、自治体間の財政力の不均衡については、道州間では道州相互間、基礎自治体間ではその道州内で財政調整を行うという財政調整制度を構築。
- 憲法裁判所の追加
- 憲法第9条について、国民に選択肢を示すため、各党に具体的改正項目を速やかに提案することを促し、衆参両院の憲法審査会をリード。憲法 9条についても、平和主義・戦争放棄は堅持した上で、正面から改正議論を行う。
- 緊急事態条項について、憲法に緊急事態条項のある国や法律で対応している国など、さまざまな国の状況を参考に積極的な議論と検討を行う。
という姿勢を示しています。
所管としては、やはりというか、道州制についての記述が厚めですね。他方で、憲法9条や緊急事態条項についての言及は少しざっくりしている印象です。
この辺りについては、今後、憲法審査会で、維新としての考え方が具体化してくるのでは、と期待しています。
国民民主党の改憲案
国民民主党は、2020年12月に、「憲法改正に向けた論点整理」というドキュメントと動画を公表していますが、それによると、以下の改正を念頭に置いているようです。
- 人権保障の分野
- 「個人の尊重」(第13条前段)がサイバー空間にも及ぶことを明記
- 平等権について、遺伝的属性による差別が禁止されることを明記(第14条)
- 自己決定権について、自己の情報の取扱いに関する決定権を持つことを明記(第13条後段関係)
- 思想・良心の自由について、デジタル時代に応じた思想・良心の形成過程の自由を明記(第19条)
- 多様な言論空間・公正かつ自由な競争秩序の確保のためのプラットフォームの責務を明記(第21条、第22条)
- デジタル・デモクラシーへの対応(第47条・第96条第2項)
- 婚姻について、「両性の合意」から「両者の合意」に文言変更(第24条) など
- 地方自治の発展・強化
- 抽象的な地方自治の本旨(第92条)の代わりに、①地方自治が住民の意思に基づく「住民自治」と②地方自治が地方公共団体によって自主的・自立的に行われる「団体自治」を明記。
- また、これに加えて、住民に身近な行政はできる限り自治体に委ねるという「補完性の原則」についても明記。
- 道州制は憲法には規定しないものの、引き続き検討を進めるものとする。
- 地方自治体の機関について、現在の二元代表制の強制をやめ、自治体の判断に委ねる形にする(二元代表制、議会内閣制、シティ・マネージャー制など)
- 条例制定権について、一律に「法律の範囲内」(第94条)とすることをやめ、その組織・権限、住民への規則等の地方自治に密接に関する事項については、法律では緩やかな「準則」を定め、その枠内で各条例を制定できるようにする。
- 地方自治体の権限について、「課税自主権」を持つことを前提としたうえで、地方債などの固有財源を持つことを明記。そのうえで、補完的な位置付けとして国による財政調整制度を明記。
- 統治のあり方の再構築
- 臨時会の招集期限が現行規定で明記されていないため、「20日以内に召集」と明記(第53条あるいは国会法)
- 内閣の衆議院の解散権について、①:解散事由を抽象的に限定した上で、解散時の具体的な理由の明示を義務付け、②第69条の内閣不信任の場合に限定、③:内閣不信任+自律的解散の場合(衆議院で出席議員の5分の4以上の議決がある場合)に限定、のいずれかの案を採用する
- 憲法裁判所を設置
- 憲法第9条について、自衛権の範囲は、
- Ⓐ 「個別的自衛権」の範囲に限定する立場(「旧3要件」)
- Ⓑ 国際法上の「フルスペックの集団的自衛権」の行使を認める立場
- Ⓒ 以上のⒶⒷの中間として、「限定された集団的自衛権」の範囲に限定する立場
- という考え方があるが、このうち、ⒶⒸいずれかの立場を採用することとする。 など
憲法裁判所の設置や憲法9条などは、比較的維新の考え方に近いですね。
個人的には、憲法9条については、学生時代に国際法を学んでいた身としては、「Ⓑ 国際法上の「フルスペックの集団的自衛権」の行使を認める立場」が良いと思っていますが、この辺りは憲法審査会の中で具体化されていくかと思います。
とはいえ、全体的に、現状認識や考え方、改憲規定案など具体的に示されており、これと自民党案、維新案をすり合わせていく形が理想的では、と個人的には思っています。
その他政党の改憲に対する立場
立憲民主党
立憲民主党の泉代表は、憲法改正について「憲法審査会で議論することがあれば、誠実に協議していきたい」ということを述べていますが、同時に、「憲法改正を目的とする憲法改正ではいけない。法律でできることを憲法改正の議論に結び付ける必要もない」として、改憲については積極的な立場とは言えません。
また、西村幹事長、逢坂代表代行、小川政調会長なども代表選では改憲論議に対して慎重姿勢を示していることから、立憲民主党全体として、改憲の方向で憲法審査会に臨むというのは難しい状況では、と見ています。
共産党
言わずもがな。共産党は憲法改正には明確に反対の立場です(以上)。
れいわ新選組
れいわですが、明示的にマニフェストなどでの言及はないようですが、山本太郎代表の憲法記念日のコメントを見ると、現行の憲法を遵守できていない!そんな政治はあり得ない!というスタンスのようで、今のところ改憲云々という話ではなさそうです。
3. 憲法改正に関する直近の動きと今後の見通し
ということで、憲法改正について、そもそも憲法改正とはどういうことなのか、どういうプロセスが必要なのか、どういう改憲項目があるのか、を見てきました。
今後の見通しについてですが、自民党、維新、国民民主が衆議院の憲法審査会の議論を主導し、改憲案をまとめていく、そこに他党がどういう姿勢を示すのか、というのが今後のポイントでしょうか。
おそらく、自民党は公明党とは選挙対策上、もう離れられないので、必然的に、公明党の憲法改正の考え方・案に引っ張られてしまう気はします。
ですので、まずはいきなり9条改正ではなく、分離して、基本的人権や教育といった、比較的導入しやすい部分から、発議するのでは、と個人的には見ています。
おそらくは、このような限定的な改憲案であれば、維新の松井代表が言うような、来年の参議院選挙と同日に憲法改正の国民投票も可能だとも思います。
ということで、今回は憲法改正について取り上げてみましたが、今後、臨時国会、来年の通常国会の中で憲法改正論議も活性化するかと思いますので、随時このブログやYoutubeで取り上げていければと思っています。
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それではまた次回👦