国政選挙に出るための費用・資金をどうするか問題について考えてみた(前編)ーそもそもいくら必要?どう賄う?
新年明けましておめでとうございます。Shiroです。
昨年11月から立ち上げたこの政治ブログ、引き続き今年も記事配信していきたいと思いますので、よろしくお願い致します👦
さて、以前に投稿したブログ記事「日本維新の会、国民民主党の参議院選挙の公募書類提出してみた」やYoutube動画「維新と国民民主の国政公募に応募してみた【元官僚・政治系Vtuberしろチャン!】」で政党の国政公募の話をさせていただきました。
これらの記事・動画に対して、Twitter 上などで、選挙をめぐるお金に関する特集もぜひ!という声を頂いたこともあり、今回は、国政選挙に必要なお金というテーマでお送りできればと思います。
<目次>
- 国政選挙に必要な費用・資金について
- 実際にいくらかかっているのか選挙運動費用収支報告書・政治資金収支報告書を見てみた
- 第25回参議院選挙(2019年)の大阪府選挙区の例
- 第25回参議院選挙(2019年)の富山県選挙区の例
- 実際に政治活動・選挙費用にいくらかかっているかのまとめ
- 政治活動・国政選挙に必要な費用をどう賄うか?
- ①自己資金(貯金などの資産)で賄う
- ②親戚や知り合いから借りる
- ③寄付を募る
- ④銀行から借り入れる
- ⑤クラウドファンディング
- ⑥政党の金銭面でのサポート(公認料等)
- 落選した場合どうなるのか?(後編へ続く)
1.国政選挙に必要な費用・資金について
まず、そもそも国政選挙に出るのにいくらお金が必要か?という点を見ていきます。
ざっくりですが、選挙活動前の政治活動費用や、供託金、自身の生活費も含め、最低でも、大体1000万円~2000万円くらいの資金は必要になると言われています。
ただ、これは自身の家族構成や居住地・選挙区や政治活動・選挙戦の戦い方(ポスター、街宣、集会、ネット広告等)、どの国政選挙に出るのか(衆議院選挙の小選挙区なのか比例なのか、参議院選挙の選挙区なのか比例なのか)によるので、あくまで目安ととらえていただいた方が良いかと思います。
ちなみに、どぶ板選挙を徹底的にやった場合で、かつ、地方議員の方の場合の事例ですが、維新系の地方議員の方々がYoutube動画で、選挙資金に実際いくら必要だったかをまとめている動画がありますので、興味ある方はぜひどうぞ↓
1年間国政選挙のための活動を行い選挙に出た場合、2000万円強かかるという場合もあるようです。
ただ、この辺りは、そもそも活動コストを下げる余地がどの程度あるのか、どぶ板路線で行くのか、ネットどぶ板で行くのか、そのミックスで行くのかなどの論点もあり、それ次第で必要金額は変動します。
また、人件費や事務所費用、自身や家族の生活費がどれくらいかかるかは、家族構成や居住地などによってもまちまちですので、参考値として捉えていただいた方が良いかと思います。
2.実際にいくらかかっているのか選挙運動費用収支報告書・政治資金収支報告書を見てみた
実際に国政選挙の活動費用にいくらかかっているのかは、都道府県の選挙管理委員会が公表している「選挙運動費用収支報告書」を見れば分かります。
・第25回参議院選挙(2019年)の大阪府選挙区の例
例として、2019年7月に行われた第25回参議院議員選挙の選挙運動費用収支報告書を見てみましょう。
こちらのリンクから、参議院議員選挙の大阪府選挙区の該当報告書を閲覧できますが、まず費用を見てみると、各候補者の平均で、選挙期間中だけで約1300万円の費用をかけていることが分かります。ちなみに、自民と立憲の候補者は3000万円以上費やしていますね。
なお、同年4月に実施された大阪府の衆議院選挙の補選では、平均で700万円強の費用をかけていますね。
参議院議員選挙の話に戻ります。
今度は選挙期間中の収入面ですが、こちらは平均で1100万円の収入となっていますので、平均で200万円程度の赤字となっています。
また、供託金の没収ラインをクリアした場合、供託金が戻るのと、加えてポスター費用、ビラ費用、政見放送費用などを公費負担してもらえる制度があるのですが、供託金没収ラインをクリアした方は、だいたい700万円~800万円くらいは事後的に戻ってきているようですね。
ですので、供託金没収ラインをクリアした場合という前提付きですが、基本的には黒字or±0でバランスしている、ということができそうです。
・第25回参議院選挙(2019年)の富山県選挙区の例
別の例を見てみましょう。
同じく2019年の参議院議員選挙の富山県選挙区の例です。
こちらのリンクから、該当する選挙運動費用収支報告書に飛べますが、内容を見てみると、まず費用面では、自民党候補は3200万円程度かけていて、国民民主党の候補は1400万円程度かけていますね。
収入面では、自民党候補は約2650万円で600万円弱の赤字になっていますが、供託金没収ラインをクリアしているので公費負担で±0でバランスしています。
これはどちらかと言うと、戻ってくる供託金と公費負担分を見越して、±0になるように政党からの寄附で調整したというのが正しい解釈ですかね。
また、対立候補の国民民主党の候補の収入を見てみると、約900万円の収入で、約550万円の赤字となっていますが、これも供託金没収ラインをクリアしたことで約550万円が戻ったことで±0となってバランスしています。自民党候補と同じく、政党からの寄附で調整したようです。
ちなみに、収入面について、二人の候補のいずれも、選挙期間に候補者本人からの寄附はなかったようです。
なお、参考情報ですが、選挙費用を除いた政治活動費用がどのくらいかかっているのかについて、上記国民民主党の候補者の例(政治資金収支報告書)を見てみると、2019年の合計で約1500万円の費用をかけています。収入は政党からの寄附で同額となっており、収支はバランスしていますね。
・実際に政治活動・選挙費用にいくらかかっているかのまとめ
ということで、実際に国政選挙に出るにあたって、選挙費用や政治活動にどの程度の費用がかかるのかを見てみましたが、大阪府と富山県の2019年の参議院議員選挙の事例を見る限り、少なくとも政治活動費用と選挙費用は、政党の公認を得られれば、基本的に全て政党がサポートしてくれていると言えそうです。
他方、候補者の生活費などに対するサポートがあるかは現時点では不明ですね。ここは政党からのサポートもあるかもしれませんが、基本的には自分である程度賄う用意をしておいた方が良さそうです。
3.政治活動・選挙に必要な費用をどう賄うか?
次に、これらの政治活動・選挙資金をどう賄うかですが、これには、
- ①自己資金(貯金などの資産)で賄う
- ②親戚や知り合いから借りる
- ③寄付を募る
- ④銀行から借り入れる
- ⑤クラウドファンディング
- ⑥政党の金銭面でのサポート(公認料等)
などのオプションがあり得ます。
これを順番に見ていければと思います。
①自己資金(貯金などの資産)で賄う
これは一番最初に出てくる選択肢ではないかと思います。
貯蓄の切り崩しや、株式などの金融資産の売却益などで政治活動・選挙活動の資金を賄うという選択肢ですね。
ただ、全ての費用をこれで賄える人はそれほど多くないのではないかと思いますので、この後の②~⑤の選択肢との組み合わせというのが現実的かと思います。
②親戚や知り合いから借りる
これも、比較的、現実的な選択肢でしょうか。
ただ、ある程度資産に余裕がある親戚や知り合いがいるという前提条件に加えて、人によっては、政治的主張に賛同してくれることという条件も必要になるかと思います。
また、後編でお話する予定の、もし落選した場合の返済プランなども必要になるかと思いますので、そういったことも含めて総合的に判断していく必要があるかと思います。
③寄付を募る
これは、実質的には政党の公募に受かった後の話ですね。
無所属で国政選挙に打って出るという場合には、よほど掲げる政策が支持されないと、寄付を集めるのは困難でしょう。
また、仮に政党に所属していたとしても、その政党の支持基盤であったり、候補者に過ぎない人間にどれほど寄付が集まるかというのは、自身の地元での活動・露出に加えて、SNSやYoutubeなど含めたオンライン上での露出の強化がどの程度できるかに依存するかと思います。
ですので、寄附によって、選挙活動とその前段階としての政治活動のための資金を全て賄うというのは現実的ではなく、①の自己資金やその他の選択肢とセットで用いるサブ的な選択肢、と位置付けられるかと思います。
④銀行から借り入れる
これはなかなか難易度が高い選択肢ですが、一応記載しておきます。
貯蓄やその他資産などの担保があるかなど含めた融資審査が必要になるため、そういった資産が無い方は基本的に採用できない選択肢です。
どちらかと言うと、新人議員候補というよりは、ある程度、議員歴がある方が使うオプションという位置付けの方が濃いですかね。
⑤クラウドファンディング
これはかつて、現・日本維新の会の音喜多駿政調会長が、あたらしい党を立ち上げる時に使ったりしていた手法ですね。
この試みは、国内クラウドファンディング大手のCAMPFIREで、最終的に1200万円超を集める結果となり、あたらしい党立ち上げの資金源となりました。
また、上の音喜多さんのtweetで言及されている家入一真さんは、2014年の東京都知事選ではクラウドファンディングを実施して、700万円超を集めていますね。
ちなみに、現在は、CAMPFIREは政治目的でのクラウドファンディングの利用は規約で禁止しています(理由は不明だが、政治資金規正法との関係を考慮?)。
なお、日本には、他にはMAKUAKEとREADYFORというクラウドファンディングサービスがありますが、利用規約などを調べてみたところ、
- MAKUAKE ⇒ 利用規約上は明確に政治目的の利用はNGではない
- READYFOR ⇒ 同上
という結果でした。こちらは、追加情報があればまた更新させていただきます。
アメリカでは、オンライン上での資金集めが当たり前なので、政治資金の規制法に準拠した政治用途のクラウドファンディングサービスが普及していますが、日本がそのようになるのはなかなか時間がかかりそうですね。
ということで、クラウドファンディングは、2022年の時点では政治活動・選挙活動の資金確保という用途で使うのは難しそうです。
⑥政党の金銭面でのサポート(公認料等)
政党公募に応募する場合は、この選択肢で政治活動・選挙活動の資金をある程度賄うことが可能です。
ただし、どの程度の金銭サポートがあるかは政党によります。
例えば、前衆議院議員の津村啓介氏が林芳正衆議院議員との共著「国会議員の仕事 職業としての政治」(中公新書)で語っていたところによると、旧民主党では、月額50万円~100万円の活動費(うち30万円は生活費として使ってOK)と、選挙時には1500万円の公認料を公認候補に対して支給していたようです。
政党からこの規模のサポートがあれば、1500~2000万円ともいわれる選挙費用(とその前段階の政治活動費用)は実質的に全て賄えることになりますね。
なお、現在の政党は正直あまり情報がないのですが、国民民主党については、少なくとも供託金は党が負担するということを、オンライン上での説明会で玉木代表が明言しています。
また、N党は候補者については負担ゼロ(全て党が負担)という思い切った方針を採用しているようです。
また、自民党や国民民主党なども、上の第25回参議院議員選挙の例で見た通り、政党からの寄附で少なくとも選挙費用については、候補者自身の実質的な負担はゼロにしているようです。
個人的には、こういった、政党が候補者に対する資金サポートを行い、それを打ち出すことで、有為な人材がより集まりやすくなるのではないかと思っていますし、落選リスクに対する金銭面でのリターンがない政治家という職業のすそ野を広げるためにも、こういう資金サポートは各党手厚く行って欲しいと思っています。
勿論、お金目的の候補者が紛れ込まないようにするために、各政党での候補者のスクリーニングはしっかり行う必要がありますが。
今回の記事は以上になります。
後編では、落選した場合にどのような運命が待っているのか、を場合分けしてみていければと思います。
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それではまた次回👦
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