教育無償化、教育バウチャー、教育国債について考えてみた(後編)ー教育国債って何?日銀保有国債の一部永久国債化って?

こんにちは。Shiroです。

前編では教育無償化、中編で教育バウチャーをそれぞれ見てきましたが、今回は、国民民主党が提案している「教育国債」、そして、「日銀保有国債の一部永久国債化」について見ていきたいと思います。

<目次>

  1. そもそも国債って何?
  2. 教育国債って何?
  3. 日銀保有国債の永久国債化って何?

1.そもそも国債って何?

国債は、そもそも

  • 国が発行する債券で
  • 国が利子の支払いと元本の支払いを行う

ものです。

日本の場合、戦後に占領政策の一環としてGHQ主導で作られた財政法で国債について規定しています。その内容は、以下の6種類です。

  • ①建設国債
    • 一般会計において、公共事業費、出資金、貸付金のために費やされる国債(財政法第4条第1項但し書)
  • ②赤字国債(特例公債)
    • 一般会計において、税収と建設国債発行で足りない財源を補う目的で発行する国債。
    • 財政法では原則として認められてないため、発行する際には特例公債法を特別に制定する必要
  • ③年金特例国債
    • 2012年と2013年に、基礎年金の国庫負担割合引上げの財源確保できなかったために、一般会計で発行された。2033年までに消費増税分の一部を財源に元利償還される予定。
  • ④復興債
    • 文字通り、東日本大震災の復興の財源確保のために発行される国債。原則として復興予算は復興特別税の収入で確保するが、それまでの繋ぎの財源として活用。
  • ⑤借換債
    • ①~④の国債の償還額の一部を借り換える際に発行される国債。
  • ⑥財政投融資特別会計国債(財投債)
    • 財政投融資対象機関に対して貸し付けるための資金調達目的で発行される国債
    • 財投債は財政投融資特別会計財政投融資資金勘定なので、普通国債の残高と分けて管理される。

ということで、一般に国債という時は上記いずれかを指すわけですが、通常、公共事業費を除く予算の一般会計の支出の原資としての話をする場合は、②の赤字国債を指すことが通常です。


2.教育国債って何?

教育国債は、無条件の教育無償化などの教育政策の拡充の財源として考えられている国債で、政党では国民民主党が2021年衆議院議員選挙のマニフェストなどで掲げ、玉木雄一郎代表も国会の代表質問などでたびたび必要性を訴えているものです。

現状の国債は、上述の6種類しかありませんので、(通常の赤字国債と区別する形で)教育国債を発行する場合には、財政法の改正か、あるいは別途特別措置法の制定が必要となります。

国民の玉木代表も、今回の通常国会の1/20の代表質問では、以下のような質問をしています。

「国民民主党は、選挙公約の柱として「積極財政への転換」「人づくりは国づくり」を掲げ、教育国債の発行などを財源に、児童手当の高校卒業までの延長、給食費、教材費を含めた完全無償化を所得制限なく実現することを提案しています。」

玉木雄一郎オフィシャルブログ

また、前回臨時国会では、玉木代表は、

「国民民主党は、使途を人づくりに絞った教育国債の発行によって、今後十年間、教育、科学技術予算を年間五兆円規模から約十兆円規模に倍増させることを公約に掲げています。教育国債を発行可能とする財政法の改正を検討すべきと考えますが、総理の見解を求めます。」

国会会議録検索システム

という質問をしています。

これに対する岸田総理大臣の答弁は、「教育国債との御指摘については、安定財源の確保あるいは財政の信認確保の観点から、慎重に検討する必要があると考えております。」という通り一遍のものでした。

ですので、無条件の教育無償化や教育予算倍増の原資となる教育国債の導入については、国民民主党が政権を取らない限りは、残念ながら実現することは難しそうです。

なお、つい先日の1/19に、安倍元総理、立憲の野田元総理、公明の山口代表が最高顧問、自民党の下村元文部科学大臣が会長を務める超党派の教育立国推進協議会というものが設立されました。

役員には、立憲の泉代表、維新の馬場代表、国民民主の玉木代表の名前も入っているようです。

超党派で180名という相当な規模の超党派協議会ですが、今年6月までに、教育国債含む教育の財源についての提言をまとめる予定ということのようですので、要注目ですね。


3.日銀保有国債の一部永久国債化って何?

最後に、「日銀保有国債の一部永久国債化」について見ていきます。

これは、国民民主党が、2021年衆議院議員選挙のマニフェスト、及び同党の経済調査会が2021年12月末に出した「財政金融政策に関する考え方」に記載されている政策で、積極財政のための財源の多様化の一つの選択肢として考えられているものです。

現在、日本政府の国債残高は(ちょっと古いですが)2020年度末で1216兆円強となっていますが、4割程度の481兆円を日銀が保有しています。

冒頭述べた通り、国債は債券なので、利払い(半年に1回)に加えて、2年なり10年なり、それ以上の期間(過去の最長だと償還期限40年)で設定した償還期限を向けた場合には、現金か、あるいは上述した借換債で償還する必要があります。

「日銀保有国債の一部永久国債化」は、このうちの償還について無期限にする(つまり償還がないので償還時の支払いはなくなるが、利払いはする。)というものです。

なぜこれが可能かと言うと、日銀は金融政策に関しての独立性はあるものの、政府が日銀の過半数の出資証券の所有者であり、さらに人事権も予算も政府同意が必要など、いわば日本政府の子会社の様な位置付けだからです。

また、政府が日銀に支払っている国債の利払いも、結局は、日銀が政府に支払う国庫納付金(上納金のようなもの)と行って来いで±0なので、日銀保有国債の一部永久国債化は、やろうと思えば実現可能な政策、と言うことができます。

ただし、2020年度末での日銀保有国債が40%程度、と言いましたが、仮に将来、減税や積極的な財政出動などが功を奏して経済回復しインフレ率が2%を超えてさらに高水準のインフレとなった場合、今度はインフレ抑制の引き締め策を行う必要があります。

その場合には、政策金利の引き上げに加えて、日銀保有国債の売却(売りオペ)が重要なインフレ抑制オプションになるわけですが、永久国債化を行うと、このうちの日銀保有国債の売却(売りオペ)の難易度が上がる可能性があるのでは、と思っています。

というのは、売り先である民間金融機関は、毎回の利払いは受け取れるものの、償還時の支払いがないため、そのような国債にどれほど魅力を感じるか不明だからです。

この辺りは、私も行政や民間企業での国際売買実務の経験があるわけではないので、もう少し色々調べて掘り下げていければと思っています。

あとは、財政法第5条は日銀の直接引き受けを禁止しているため、日銀保有国債の一部永久国債化が、(市中⇒日銀でなく)日銀の直接引き受けを前提にしているのであれば、財政法の改正が必要になることにも注意する必要がありまし、これを行うには国民民主党が政権を取る必要があります。

そういう意味で、日銀保有国債の一部永久国債化については、インフレ時含む様々なシナリオにおける実現可能性や、その具体的方法含め、今後要精査の政策オプションかなと思っています。


今回の記事は以上になります。

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