原油高・ガソリン価格高騰とトリガー条項凍結解除について
こんにちは。Shiroです。
最近ちょっとブログもYoutubeも前回から間が空いてしまいましたが、また本業の合間に少しずつ投稿できればと思ってます。
ということで、今回のお題ですが、何かと話題に上っている原油高・ガソリン価格の高騰とトリガー条項凍結解除について、取り上げてみたいと思います。
<目次>
1.原油価格と国内ガソリン価格の現状
まず、原油価格の推移ですが、原油価格の指標として用いられているWTI原油先物価格の推移を見ると、1バレル100ドルの水準に近付いており、この1年間で約2倍の上昇となっています。
この背景としては、脱炭素の潮流を受けて、原油生産能力の投資拡大が抑えられてきたこと等があります。
続いて、国内のガソリン価格ですが、上記原油価格の上昇を受けて、国内でのガソリン価格は高止まりしており、2月2日には169円/ℓと170円に迫る勢いです。
当然ながら、車ユーザーにとっては家計を悪化させる要因でもありますので、ガソリン価格の高騰について話題になっているということになります。
また、原油価格の上昇を受けて、ガソリン以外の灯油、軽油、重油などの価格も上昇しています。灯油や軽油は一般家庭への影響も大きいですし、軽油・重油は大型車や工場のボイラーなどの稼働コスト上昇にも繋がるので、一部製造業やバス事業などへの影響も考えられます。
2.トリガー条項凍結解除って何?
ということで、じゃあどうやってガソリン価格等の高騰の影響を緩和するのか、という話になりますが、ここで登場するのが「トリガー条項凍結解除」です。
トリガー条項とは、租税特別措置法第89条のことで、ガソリン価格が3か月連続で160円/ℓを超えた場合に、上乗せされている特例税率25.1円/ℓ分を停止しガソリン価格を引き下げる措置です。
しかし、2011年の東日本大震災以降、復興財源をねん出する観点から、このトリガー条項は凍結をされていました。
この凍結を解除することが、「トリガー条項凍結解除」です。
これが実現すれば、ガソリン価格が25.1円/ℓ安くなります。
3.トリガー条項凍結解除に関する各党の主張は?
このトリガー条項凍結解除を最初に訴えたのは、国民民主党です。
昨年2021年10月の衆議院選挙前に、公約に追加する形でトリガー条項凍結解除を彼らの主張に盛り込みました。
また、国民民主党は日本維新の会と共同で、トリガー条項凍結解除法案を昨年の臨時国会で提出しています。
この議員立法は、実際に審議はされず、いわゆる「吊るし」にあっています。
ですので、ガソリン価格が高騰する中、両党(特に国民民主党)はトリガー条項凍結解除法案の審議を求めています。
また、国民民主党と日本維新の会以外では、立憲民主党もまたトリガー条項凍結解除に関する議員立法の提出を両党の一日遅れで行っています。
立憲民主党の代表選等で、国民民主、維新との調整の時間がなかったことが別々の提出の理由のようです。
4.トリガー条項凍結解除に対する政府与党の反応
ということで、国民民主、維新、立憲の3党がトリガー条項凍結解除法案を提出しているわけですが、普通に考えれば、ガソリン価格が高騰し、家計や企業が困難に直面している状況ですので、トリガー条項凍結解除を行えば良いようにも思います。
ですが、政府は、昨年秋の臨時国会で、トリガー条項凍結解除の代わりに、5円/ℓ引き下げを目指す石油元売りへの補助金の予算を計上し、現在執行しています。
ですが、現在、足元の状況を見ると、昨年秋時点よりもさらにガソリン価格が上昇しています。
これを受け、再度、国会質疑等で国民民主党などの野党がトリガー条項凍結解除を求めて予算委員会などで質疑を行っていましたが、足元のガソリン価格の高騰を踏まえ、自民党は、高市政調会長が了する形で、2/18に、トリガー条項凍結解除ではなく、トリガー条項凍結解除並みの25円/ℓ以上の引き下げ効果がある補助金導入の提言をまとめ、政府に提出しました。
5.ガソリン価格とトリガー条項凍結解除に関する今後の見通し
ということで、今後の見通しとしては、石油元売りへの補助金の拡充によって、25円/ℓ以上のガソリン価格の引き下げを政府としては目指していくようです。
財源については、21年度予算の予備費を活用する方針のようです。
上の高市さんのtweetにもありますが、高市さんや自民党は以下を理由に
- トリガー条項凍結解除だと法改正が必要なこと
- トリガー条項凍結解除だと税収減となるため、その穴埋めをどうするか
- 上記と関連し地方の税収にも影響あるためトリガー条項凍結解除の場合地方との調整が必要
- トリガー条項凍結解除だと、対象はガソリン価格と軽油価格なので、灯油と重油が対象外となる
- トリガー条項凍結解除を行うと買い控えや混乱が起こる
これについては、大前提として、今100ドル/バレルですが、今後場合によっては125ドルを超える予想もありますので、その場合に、この補助金で足りるのか、と言う論点があります。
政府が行っている、石油元売りへの補助金は、ガソリン価格引き下げへの影響が100%ではなく、どうしても間接的・限定的なものにとどまります(加えて、補助金執行の事務コストもかかります)。
トリガー条項凍結解除について、法改正や地方との調整が必要、財源の穴埋めが必要なことはその通りですが、一定のリードタイムが必要なのであれば、先々を見越して今のうちに動いておく必要があります。
例えば、参議院選挙後、今年の秋になってからまた、原油価格やガソリン価格が高止まりしている状況で、一から臨時国会でトリガー条項凍結解除について議論していては間に合いません。
さらに、今後、米国FRBの利上げに伴って今年、円安がさらに進むことを勘案すると、輸入材である原油は更に値上がりすることになりますので、トリガー条項凍結解除については、先々仕込んでおく必要があります。
また、トリガー条項凍結解除の対象外の灯油と重油については(消費税減税というオプションもありますが)補助金で対応すれば良いでしょうし、トリガー条項凍結解除による買い控え・混乱という話は(仮に起きるとして)それは補助金の場合でも変わりません。
なお、萩生田経産大臣は、トリガー条項凍結解除による買い控えと混乱について、1/28の(衆)予算委で、2008年の揮発油税の暫定税率が失効した際に起きた買い控えと混乱について言及したうえで、
「直ちに、今回、じゃ、二度目の発動をしたときに同じことが起こるのかと聞かれれば、それは、一度経験している国民の皆さんですから、対応はまた違うんじゃないかということは予想がつくんですけれども、私自身は、同じ考えかといえば、岸田内閣の一員ですから、同じ考えですと申し上げるべきなんでしょうけれども、私はあえてこのことは発言していないということは御理解いただきたいと思います。」
2022年1月28日衆議院予算委員会での萩生田経産大臣の質疑より
と答弁しています。
今回の記事は以上になります。
記事中に書いたように、おそらく岸田政権は、石油元売りへの補助金を通じたガソリン価格の25円/ℓ以上の値下げを目指していくかと思います。
しかし、原油価格の更なる値上がりが予想されている現在、トリガー条項凍結解除含め、先々手を打っておかないと、危機が顕在化した後に検討を始めてもあとの祭りということになりかねません。
そういう意味では、国民民主党、日本維新の会、立憲民主党などには、引き続き、トリガー条項凍結解除について、国会質疑などで政府に求めていって欲しいと思います。
ちなみに、今回の記事では触れませんでしたが、原油価格が今後値上がりする場合、電気代がさらに値上がりすることになります。
この1年で、25%近く値上がりした家庭もあるようですが、さらに電気代が上がると、可処分所得が増えない中でコストだけが上がるという、国民の生活は勿論、企業経営にも直結する課題が顕在化してきますので、早期に原発再稼働の検討を開始すべきタイミングだと思います。
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それではまた次回👦